2021-04-27
三度目の緊急事態宣言、映画館に滑り込む
三度めの緊急事態宣言が東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に発令された。4月25日~5月11日までの予定。規制は思ったより厳しく、美術館、図書館、映画館などにも休業要請が出された。
頂きものの4月末までの無料映画チケットが数枚あった。
「2時間座っているのは腰痛持ちにキツイ」と「チケットを何枚も無駄にするのがもったいない」とで迷ったが、滑り込みで観に行った(本来なら出かけないほうがいいが、飲食しないし誰とも話さないからとよしとした)。
観たのは「戦場のメリークリスマス」。
1983年公開大島渚監督作。その4K修復版の2K上映という。38年前の作品だ。
当時ビートたけしさんや坂本龍一さんが出演されていて大いに話題になった。坂本龍一さんが手がけた音楽も繰り返しテレビで流れて耳に馴染んでいた。
しかし、あらすじはまったく知らなかった。
戦闘シーンのない戦争映画
見始めてびっくり。
舞台は、1942年戦時中のジャワ島、日本軍の俘虜収容所。
日本軍軍曹ハラ(ビートたけし)とイギリス人捕虜ロレンス(トム・コンティ)は暴力が日常茶飯事の収容所で日々起こる問題に奔走する。ハラの上官で規律を厳格に守る収容所所長、陸軍大尉のヨノイ(坂本龍一)は、ある日収容所に連行されてきた反抗的で美しいイギリス人俘虜のセリアズ(デヴィッド・ボウイ)に関心を持ち優遇しようとする。しかしセリアズの反抗的な態度は変わらない。“正義”を守ろうとするがゆえ孤立を深め追い詰められていくヨノイ。やがて日本敗戦。その後。
見始めて、あ゛あ゛これは…(>_<) となった。
私に言わせれば、(主に日本軍の)暴力に次ぐ暴力、ハラスメントに次ぐハラスメントで、それが大画面で臨場感を伴って迫ってくる。これを見る心構えがまったくできていなかった。自分が暴力を受けている気分になる。ハラキリ、生き埋め、死刑…。
それもそのはず、帰りの電車で映画の宣伝文句を見たら、「戦闘シーンのない戦争映画 出演はすべて男 戦争の闇を容赦なく描く 伝説の名作がついに4K化」とあった。
ひーっ、なるほど…。
テーマはわからないものの鮮烈さが残る
映画が伝えたいことがよくわからず、それでも何かわからない鮮烈さに心惹かれ余韻が残った。
なんで大島渚さんはこれを作ろうと思ったのかー。
一つ理解できたのは、「罪悪感」が一つのテーマになっていたことだ。セリアズの回想シーンでは、自分の対面を守るため弟への集団いじめを見過ごした過去とそれに深い罪悪感を感じていることが描かれていた。だから懲罰へと自らを仕向けていくように見えた。自分なりの贖いを求めていたのだ。そして結果的に俘虜長の身代わりになるかたちで処刑を受ける。
一方ヨノイは、1936年2月26日の二二六事件で同志がことごとく処刑されたなか自分だけは満州配属だったため生き残ったことに「恥」を感じていた。日本人にとって罪悪感は、しばしば「恥」として現われるようだ。
帰路Amazonプライムを見てみたら、トップレビューに「ヨノイ大尉とセリアズの恋の駆け引きが大きな背景になっているように見えました。」とあって、なるほど…!だから、ヨノイは、セリアズに罰を与えよう近づいた際思いがけずセリアズから頬にキスをされ…失神しちゃったのね、とようやく事態が呑み込めてきた。
そう、ビートたけしと坂本龍一の対比、イギリス人と日本人の対比、隣り合わせの死と生、理性で抑圧しすぎた感情、何層にも織りなす対比の効果で鮮烈さが残っているのか。
先のレビューは、「おそらくもっと深くには『死と美』のテーマがあるように思います。」と締めくくられていた。なるほど確かに。
そして私が感じたのは、「死とエロス」だ。死と隣り合わせのエロス。極致の艶めかしさ。
セリアズ役のデヴィッド・ボウイのこぼれ出る美しさ…、坂本龍一の堅い青さ。
若い頃を思い出す
ささやかな“自慢”になるが、私はデヴィッド・ボウイと会話したことがある。
思い返せばちょうど1983年頃だ。
世事に疎い私はデヴィッド・ボウイを知らなかった。当時、ホテルのレストランに派遣されて希望するお客さんにポラロイド写真を撮って売る(1枚1,300円)というバイトをしていた。
外国人のお客さんには「Would you like your picture?」と聞くよう教えられていて(これで通じるのか?)、レストランで食事を終えたくしゃくしゃ髪の細身の外国人男性にもそう聞いた。
「No,Thank you.」と返され、一礼して下がった。
ホテルの支配人が「あれ、誰かわかる?デヴィッド・ボウイだよ。」と教えてくれた。これだけ。
その時も美しい人だと思った。
私も若かった。映画のたけしさんも若い。坂本さんも若い。あの頃…あの時代の香り。
大島渚さんに興味をもつ
映画を見て、なんでかわからないけれど、監督の大島渚さんに興味を持った。
何を考えていたんだろう?
どういう世界観や思想がある方なのかな?
もう一つ同時に大島渚監督の修復版が放映されている。映画館で予告編が流れた。
「愛のコリーダ」だ。
「大島渚監督、最大の問題作。 阿部定事件に挑み“世界のオーシマ”へ。アートかエロスか? 裁判にまで発展したその答えはいかにー。」
気になる。
でも、予告編だけでも強烈すぎて、こんなん見ちゃったら3日ほど寝込みそうだ。