『女の答えはピッチにある』

2021-01-30

サッカーのエッセイがこんなに面白いなんて

図書館で借りた本、昨日が返却期限だったのにまだ手元にある。

『女の答えはピッチにある~女子サッカーが私に教えてくれたこと』(キム・ホンビ著、小山内園子訳)

おもしろいから最後まで読んでから返そう、となって昨日は結局返却しなかった。そして、今日も焦りながら読んでいるのだけど、そのうち、どうせ遅れたんだから、今日中に返せばいいだろ、になって、ブログに覚書を書くことにした。

「仕事アリ、夫アリ、子どもナシ、30代の著者は、ロナウドのプレーに魅了されてから熱烈なサッカーファンとなり、地元のアマチュア女子サッカーチームを探して入団。それから起こった様々な出来事や心情の変化をユーモア溢れる生き生きとした筆致で綴る抱腹絶倒の体験記。」(編集社の紹介)

そもそも(この本もまた)なんで予約したのかまったく思い出せない。どこかで紹介されていたんだろうけど。

サッカー…て、私からもっとも遠い領域だ。

サッカーは男の子がやるものだという時代に育ったし、球技苦手。チームプレーは私には向かない(と思っている)。世間がサッカー熱に湧いている時も、どっちが勝っても別に(二元性の出来事よね?)…と感情移入できなかった。

女子は、パワー面でもスピード面でも男子に劣るだろうから女性がわざわざサッカーを選んでやる意味があるのかしらん、とすら思っていた。

だけど、キム・ホンビさんのエッセイでアマチュアサッカーの世界を覗くと、おもしろい!

サッカーを通じた人間関係とキムさんの心身の変化(成長ともいう)…キムさん自身、洞察が鋭くてユーモアがあって加えて表現力もあるから、どう書いても面白くなっちゃう。

説明したがる男たち

これはある種、フェミニズムの本でもある。知らず知らずのうちに女性に掛けられた“呪い”を解いていく。

マンスプレイニングの話が出てきた。

マンスプレイニング(mansplaining)という語、私は初めて知った。男を意味する「man」(マン)と解説を意味する「explain」(エクスプレイン)をかけ合わせた語らしく、一般的には「男性が、女性を見下すあるいは偉そうな感じで何かを解説すること」らしい。

サッカーという男性の領域とされるところで、アマチュアサッカーを始めた著者にも、様々な男性が上から目線でちょっかいを出してくる。チームの対戦相手の男子チームも同じだ。

そういう場面では、女性サイドが「えっ、すご~い!」「初めて知りました」「さすがですね」等となれば、男子サイドは鼻高々だが…。

「逆に、当然無知であるべき女が思った以上に(ひどい場合、自分より)物知りだとわかると困惑し、妙に長話をしたり『おお、なかなかやるじゃないか!』と、教師が教え子をいい子いい子するみたいに褒めたりもする。それで終わりではない。『サッカーに詳しいフリする女は、男にとってプレッシャーだからモテないぞ。もうちょっと男を立てなきゃ。』とか、それとは正反対の『男にモテたくてサッカーを見てるんだな?』というセリフを同時に聞かされることもある。頼むから意見の統一ぐらいしてくれよ。」(本文より)

そしてその後の両者の試合展開…。

それは女性側から見ると痛快でもあった。

香典はチームで出す?個人で出す?

チーム内でのケンカだったり、初ゴールを決めたいと目論んだ著者の顛末など興味深い話はたくさんあったのだけど、どうでもいいけど日本でもありそうな話だな、と思ったのが、チームでの香典の出し方のエピソード。

女子チームは、実力が同等となる男性シニアチームと対戦することが多いらしいが、そのシニアチームのおじいちゃんメンバーがたまに、亡くなる。

そのような時これまでチーム内でメンバーに一律に徴収して渡していた香典を、強制で集めるのはやめて有志が各自で出そうという提案が一部メンバーから出されて、それはドライすぎる、ともめる。

「たまに試合をしているだけで顔も思い出せない場合だってある、しかもこちらサイドは受け取る側になる率は低い、それぞれ経済的な事情もあるのだし…」と、一律徴収をしぶる側と「あのチームで一緒にやっている人がみんな死んだって、たいした額じゃない、しかも一括払いじゃないんだし」と慣例を守ろうとする側。

こういうのってあるな~とくすっとした。

そう、ジンセイってそういうささやかな人とのふれあいの積み重ねなんだな…

 

さあ、コーヒーでも入れて残り急いで読んじゃお。

暗いニュースが多いなか、かる~く読めほっこり元気になる…おススメ、と思います。

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