2018-12-06
少し落ち着いてきたら、私は自分人生ゲームの映画館で「母との秋旅2018」というVTRを選び、映画の世界に喜んで浸っていたのだ、と思えてきた。
他の様々なVTRと同じひとつのVTRなのだ。それでも、これはお気に入りだったし、その中でのエピソードも楽しかった。
* * * * *
よく知らない人に声をかける人懐っこい母
私はいつもに増してトイレが近く、三日目の朝立ち寄った東福寺でも、母に「ちょっと待ってて」と言って、境内脇のトイレに寄った。
数分経って出ると、あれっ?母がいない。
見ると、10数メートル先、5、6人の制服姿の男子高校生に囲まれている。
ん、またぁ!
私の母は、社交的なほうで、よく知らない人に話しかける。
エレベーターで乗り合わせた赤ちゃん連れの人には「かわいいお顔しとられる」、観光地で袴姿だったカップルには「おしゃれさんやね」。歩きスマホの女子高生には「ねーちゃん、ちゃんと前見て歩こ!」と注意したことも。
また、何か声かけたにちがいない。
そう思った私は母に小走りで駆け寄った。
と、「いいとこに来た、写真撮って」と母からスマホを渡された。
「ちゃんと本堂の屋根まで入れてあげてね」と母。
「あ、はい。もっと皆さんもっとお互い寄ってぇ、ハイ」
パシャリ。
「あ、横でも一枚撮りますね、ハイ!もー一枚!」
パシャ、パシャ、と私。
男子高校生に見せると「バッチシです」
ニコッと笑ってお礼を言って去っていった。
声をかけたのは男子高校生のほうだった
どうも、声をかけたのは母の方ではなく、男子高校生グループの方だったようだ。
よりによって今もガラケーの80歳オーバーのおばあちゃんに頼むなんて。人選ミスだ。
母は、言われたとおりシャッターを押したけど、見きれて全員が入らなかったり、本堂が入らなかったりして、何度かやり直しさせられている途中だったという。
画面上のボタンに力を入れ過ぎて、いつもぶれてしまうのだ。
最初に声をかけた男子は、「おまえもよ~(こんなやつに声かけるなんて)」と仲間から突っ込まれていたんだとも、教えてくれた。
母は、以前新幹線の中で外国人の男性から「ここは指定席ですか」と言ったようなことを英語で聞かれ、「Free、Free」と一生懸命答えていたら近くに座っていたサラリーマンが笑われた、というエピソードも教えてくれた。
母は私とちがって、人懐っこいから、声をかけやすいオーラが出ているのかな?
どこか対人恐怖的なところがあって、ひとりが落ち着く私は、そういう母がちょっぴりうらやましい。
今度いつ頼まれてもいいように、スマホカメラの練習をする、と言って、母が東福寺で私を撮ってくれた。その渾身の一枚→