『大家さんと僕』

2018-03-21

ひとつ前の日記で「暖かさが安定してきた」と書いたのは、まちがいだった。寒いよ~。

河口湖では昨晩から雪らしく3㎝くらい積もっているとか。

寒い日の定番だった生姜入り甘酒を久しぶりに飲んだ。おいしい、温まる。

『大家さんと僕』

『大家さんと僕』は、前に友だちが「おもしろかった、貸してあげよっか」と勧めてくれていたのを、図書館で予約していたもの。予約者がいっぱいで、忘れていた頃に番が来た。

お笑いコンビ、カラテカの矢部太郎さんが、今住んでいる部屋の大家さんと自身のエピソードを描いた初マンガ。

矢部さんて、ガリガリでおどおどしている印象しかなかったけど、マンガ上手なんだな~とまずびっくり。絵もかわいいけど、ストーリーの持っていき方が絶妙。すごくヒットもしているらしい。

1階に住む87歳のおばあちゃん大家さんの感覚に戸惑いながら徐々に距離を縮め、お茶してランチして、一緒に旅行にまで行く仲に。

「矢部さん、ほんといい人だなぁ」という著者の人柄と、お歳ながら自分の世界観を持ち力むのではなく自然体でしゃんと生きる大家さんが魅力的だった。

矢部さんが大家さんにお歳を聴いた際には「終戦の時17だったから…」と。大家さんは終戦が基準だ。理想のタイプを聴いた時は「マッカーサー元帥なんか素敵だったわ」「哀愁があって どこか遠くへ 連れてってくれそうで」

その時代と今とのちがいを教訓的ではなく改めて感じさせてくれて、それが新たな気づきももたらしてくれた。

そして、歳を重ねることの豊かさと哀しさ、も感じてしまった。

「87歳の夏は今しかない」

友だちは大家さんのセリフ「矢部さんを見ていると なんで日本が 戦争に負けたか わかる気がするわ」「なんてね」ってところを例に出して、おもしろいと言っていた。

私がいちばん印象に残ったのは、大家さんが初恋の人と70年近く経って再開して、昔の恋心を打ち明けたらお相手の方も大家さんに当時思いがあったらしく、それを大家さんが残念に思い「今と違って 女性からなんて そんな時代じゃなかったから」「もっとスレたかったわ…」と言うところ。

矢部さんが「今からスレても いいんじゃないですか」と言い、

大家さんが「そうね。87歳の夏は今しかないのですものね。」と言う。

この「87歳の夏は今しかないのですものね」が最高に好き。

だれにとっても、目の前の「今しかない」ってかんじを思い出させてくれるところが。

そして、この「恋」のいく先にもまた人生を感じた。

このおばあちゃまは「おカネに困っていない」というところが、お人柄や生活に表れていてそこがひとつの特徴にもなっているけど、おカネの有無にかかわらず、「自分なりにいまを生きる」っていうお手本を見せてもらった、と思った。

そして、出会い、っていうのはあるんだな。いろんなかたちで。それを育てられるかどうかも、自分次第…ってことも、大家さんと矢部さんから学んだ。